研究概要 |
フィブリノペプチドB(FPB)放出後に露呈される重合反応基(‘B'site)とその相補的結合部位(‘b'site)の特異性を明らかにするために種々の合成ペプチド(Gly-His-Arg,Gly-His-Arg-Pro-N(A-azido-Z-nitrophenyl)Lys amide),プラスミン分画DI sephavose column,あるいはペプチドcolumnなどを作り,‘B'-‘b'間の結合実験を行なった。その結果,‘B'-‘b'間の結合はカルシウムイオン濃度に依存しているため、‘b'siteはDl領域のカルシウムイオン結合部位近傍に存在することが判明した。また,温度はアミノ酸や蛋白の疎水性において関連があり,両者の結合に影響を与えていた。さらに,‘b'siteはphotolabelの検討からD領域内のβ鎖およびγ鎖に存在することが明らかになり,しかもシアル酸が両者の結合に影響を与えているため,糖鎖の付加しているβ鎖364位Asn近傍が第一のbinding siteとして示唆される。第二のbinding siteは‘B'siteがプラスミン抵抗性の立体構造を形成することより,D領域内のγ鎖に存在し,さらに,フィブリノペプチドA放出後に露呈される重合反応基‘A'siteの相補的結合部位‘a'siteそのものであることが明らかになった。これらのことから,‘B'siteの特異性として,‘A'siteの機能を補うmodulatorとしての役割やカルシウムイオンと協調してフィブリン形成を促進させる機能を有しているものと思われる。 フィブリノゲン,フィブリン,プラスミン分解産物などの結晶解析に関しては現在結晶作成を行なっている状況であり,今後も継続して検討する予定である。
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