研究概要 |
慢性呼吸器疾患に合併する急性胃粘膜病変の病態については低酸素血症が関与していることが考えられるがそのメカニズムにつては不明な点が多い.本研究ではラットに覚醒下に5%,10%,15%の急性低酸素負荷を行い低酸素血症を惹起させ低酸素血症と急性胃粘膜病変の関係について検討した. 1.動脈血ガス分析:対照群では拘束後もPaO_2, PaCO_2, O_2SAT, HCO_3, pH, BEには変化を認めなかった.15%O_2, 10%O_2, 5%O_2負荷時にはこれらの順で1, 2, 3時間後と経時的に各パラメーターは悪化した. 2.潰瘍係数(UI) : 10%,15%O_2負荷時には対照群との間に有意な差は認めなかったが,5%O_2負荷時には経時的に潰瘍係数は増加した. 3.胃粘膜PD:同様に,5%O_2負荷時においてのみ経時的にPDは有意に低下した. 4.胃粘膜pH:対照群では拘束後胃粘膜pHの低下を認めたが,低酸素拘束群では低下は認められなかった. 5.胃粘膜ヘキソサミン量:15%O_2負荷時には対照群とは差はみられなかったが,10%,5%O_2負荷時には有意に胃粘膜ヘキソサミン量は低下した. 6.TBA反応物質:低酸素拘束群および対照群のTBA反応物質は拘束前に比べ有意な高値を示したが低酸素拘束群と対照群との間には有意差は認められなかった. 7.TeprenoneのUIに及ぼす影響:10%O_26時間の拘束では,Teprenone投与群のUIは非投与群に比べ有意に低値であった. 8.各種scavengerのUIに及ぼす影響: 1.Allopurinol:同様な実験系でAllopurinol投与群でのUIは非投与群でのUIと有意な差は認められなかった. 2.SOD : SOD投与群のUIは非投与群のUIに比べ有意に低値であった. 3.Catalase : Catalase投与群のUIは非投与群のUIに比べ有意な差は認められなかった. (まとめ)低酸素拘束における急性胃粘膜病変の形成には,攻撃因子よりもむしろ防御因子の低下が重要であることが示唆された.したがって,慢性呼吸器疾患に合併する急性胃粘膜病変の治療には防御因子増強剤が有用である可能性が示された.また,各種活性酸素消去系の検討からは,TBA, Allopurinol, Catalaseでは変化がなかったことより活性酸素の関与は少ないと考えられるが,SODでUIの低下がみられるためさらに検討が必要と考えられた.
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