出生後1年以上の雌雄の老齢マウスにつき抗癌剤シスプラチン(CDDP)による発癌実験を行い、このCDDP誘発癌に対する合成フリーラジカルスカベンジャー2-0-octadecyl ascorbic acid (CV-3611)の発癌抑制効果を検討するとともに、若年マウスにおける実験結果と比較検討した。 雌マウスの寿命に相当する2年間の観察期間における線維肉腫などの自然発癌率は2%7%であるが、若年期におけるCDDP2mg/kgの10回腹腔内投与は短期間に子宮癌や甲状腺癌など多彩な腫瘍を86.7%に誘発した。CV-3611 5mg/kgの10回皮下投与により自然発癌率、CDDPによる癌誘発率ともに低下し、癌発生の時期も遅延した。雄マウスにおいては主として肝癌を自然発生するが、CDDPおよびCV-3611の効果については雌マウスと同様の傾向が認められた。CDDPの癌誘発能については若年・老齢マウスとも認められた。しかしCV-3611の発癌抑制能は若年マウスには認められるも、老齢マウスでは明らかでなかった。 つぎに組換え型スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の発癌抑制効果を若年マウスにおいて検討した。上述と同様の実験システムでCV-3611の代わりにSOD2mg/kgの10回皮下投与を行い、雌雄マウスにおける自然発生癌とCDDP誘発癌に対する抑制効果をCV-3611と比較検討した。 CV-3611の発癌抑制効果は雌・雄マウスとも認められた。しかしSODの発癌抑制能は雄マウスにはわずかに認められるも、雌マウスではむしろ発癌促進的であった。SODは分子量30000の高分子であるので、数回の皮下投与によりSODに対する抗体が産生される。このため投与されたSODが失活してしまい、期待された効果が発揮されないのではないかと考えられた。
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