研究概要 |
制癌剤cisplatinと生体材料キチンを合体させてcisplatinの徐放性を持たせた新しい体内埋め混み型制癌剤Plachitinの研究において以下の様な知見が得られた。まず家兎の下腿にVX2癌を移植し,大腿動脈よりPlachitin(直径約50ミクロン,1gm当たりcisplatin300mg)を投与した.腫瘍増殖曲線では,cisplatinのみ投与群,キチンのみ投与群,無治療群の総てに対しPlachitin投与群で有意に抑制効果がみられた.また腫瘍の退縮はPlachitin群のみで認められた.腫瘍内のプラチナ濃度は5日間にわたり血清濃度を上回った.以上よりPlachitin動脈内投与の抗腫瘍効果は,寒栓効果に加え,腫瘍内で暖除にcisplatinが放出された結果であると推定された.以上の結果に基づき,臨床例でのPlachitin抗腫瘍効果をみた.肝腫瘍を有する患者に対し肝動脈よりPlachitin1gm(cisplatin300mg)を1ク-ルとして投与した.多発性原発性肝臓癌の症例1においては2ク-ル投与で39%の腫瘍縮小とalpha-fetoprotein値の1,182ng/mlから300ng/mlへの低下をみた.胆菅癌の症例2では3ク-ルの投与で84.4%の腫瘍縮小を,結腸癌肝転移の症例3では1ク-ルの投与後77%の腫瘍縮小をみた.全例での奏効率は66.7%であった.副作用として心窩部痛,悪心,発熱,肝酵素の上昇がみられたが,いずれも一過性であった.Plachitinの肝臓癌に対する化学寒栓療法剤としての有用性が示されたと考えられた.さらにPlachitinの腹腔内投与における安全性をみるため,腹膜播腫瘍性の消化器癌11例に対し同剤を投与した.Plachitin投与群では血清cisplatin濃度は低値で推移し副作用も特に認めなかった.以上より,動物実験,臨床試験のいずれにおいてもPlachitinの抗腫瘍効果と安全性が認められた.今後第3相試験により既存の制癌剤治療との比較を行うことが可能と考えられる.
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