研究概要 |
IL-4は,種々の生体内細胞に対し,多彩な作用を有するサイトカインであり,これまでわれわれは,ヒト胃癌,大腸癌細胞にIL-4レセプターが存在し,IL-4がin vitroでこれらの癌細胞に対し,増殖抑制等の作用を有することを見出した。今回,これらの基礎的実験結果をもとに,IL-4の臨床応用を目指し,IL-4のin vivoにおける効果や,その投与法の基礎的検討を行うことを目的として研究を行った。 ヌードマウスを用いたin vivoの実験では,IL-4投与量を最大200μgまで増量したが,胃癌細胞HTB-135に対する有為な増殖抑制効果を認めることはできなかった。In vitroにおける追加実験によって,IL-4をTNF-αやIFN-γと併用することにより,相乗的増殖抑制効果が得られることが判明した。すなわち,より低濃度のIL-4によっても増殖抑制が可能であると考えられ,これらサイトカインを組み合わせた投与による効果を検討する予定である。 IL-4遺伝子の胃癌細胞への導入実験では,IL-4mrNA発現は認めるが,蛋白レベルでの産生は確認できなかった。しかし,同時に進行した悪性黒色腫細胞M101への導入実験では,IL-4遺伝子の導入効率もよく,かつ蛋白レベルでの産生も確認された(2,500pg/10^6cells/24hr)。産生分泌期間は約2週間であった。すなわち,標的とする癌細胞の種類によって,IL-4遺伝子の導入効率,IL-4産生能などに大きな差があることが示唆された。このIL-4遺伝子導入悪性黒色腫細胞では,MHC-class I,class IIさらにはVCAM-1の発現が増大した。すなわち,ワクチンとしての有用性も期待され,今後種々の消化器癌細胞について検討する予定である。 今後のIL-4の臨床応用計画の一環として,癌患者より採取した樹状突起細胞をin vitroにおいて,IL-4,GM-CSFおよび腫瘍細胞と混合培養し,効率よい抗原提示細胞を誘導・増加させ,再び患者に戻すことによる抗腫瘍免疫誘導法を計画中である。
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