研究概要 |
これまで肝の局所血流量を非侵襲的に動脈・門脈別にかつ同時に測定する方法はなかった。しかし、われわれはポジトロンCTの特性を活かした局所肝血流量測定法を開発した。その結果、局所総肝血流量は肝の慢性障害とともに減少し、かつそれは門脈血流量の減少に負うところが大きいものと考えられた。そして、動脈血流量は門脈血流量の減少を補っているものと考えられた。門脈循環時間・シャント率は門脈血流量の減少に伴って増加しており、ポジトロンCTで慢性肝疾患の病態生理をよく捉えていると考えられた。肝・門脈臓器に関する係数の意義については今後の検討課題であるが、特に、肝に関する係数については局所門脈血流量・シャント係数と鏡面的な傾向を示しており、慢性肝障害の病態生理を表す新しいパラメーターとして注目される。ポジトロンCTによる結果と従来の血液生化学的検査との間には有意の相関が認められたものの、相関係数が低値を示すに留まった。総間血流量・動脈血流量では各肝区域間には有意差は認められなかった。しかし、門脈血流量では各肝区域間に有意差が認められ、各肝区域の門脈流量は一定ではないことが判明した。各疾患毎に局所肝血流量をみてみると、肝硬変では非障害肝に比べて局所肝血流量は低下していた。局所総肝血流量は、肝硬変・慢性肝炎・非障害肝とも各肝区域間に有意差は認められなかった。局所門脈血流量は肝硬変・慢性肝炎では各肝区域間に有意差は認められなかったが,非障害肝では有意差があり、前区域の局所門脈血流量が最も高かった。局所動脈血流量は肝硬変・慢性肝炎・非障害肝のいずれもで各肝区域間に有意差は認められなかった。さらに、それぞれの肝区域毎にみてみると有意差のある区域が多数存在し、局所肝血流量は肝区域によって異なり、肝全体として一定ではないと考えられた。
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