研究概要 |
進行膵胆道癌に対する拡大手術として肝切除合併膵頭十二指腸切除術が積極的に施行されているが,時には肝動脈を結紮切除せざるを得ない症例もある.肝動脈の遮断により肝血流量の減少,組織低酸素化が起こり肝不全を惹起することになる.肝動脈-門脈シャント術が肝動脈血行遮断時の肝不全対策として有用か否かを雑種成犬にて検討した.【対象と方法】肝動脈を結紮切離する肝動脈遮断群(遮断群,n=8)と,切離した肝動脈を門脈に直接吻合する門脈部分動脈化群(動脈化群,n=12)を作成し,術前,術直後,30分後,60分後に門脈圧,門脈酸素分圧,門脈血流,肝組織血流,肝エネルギー代謝(AKBR)を測定し両群を比較検討した.【成績】(1)門脈圧(mmHg):動脈化群と遮断群間に有為差を認めなかった.(2)門脈酸素分圧(mmHg):動脈化群では術後に上昇傾向を示したが両群間に有為差を認めなかった.術前値を100%とした変化率では,動脈化群が術直後で遮断群(91%)と比較して有意(p<0.05)に高値(113%)を示した.(3)門脈血流(ml/min):動脈化群では術後に上昇傾向を示し,遮断群では下降傾向を示したが両群間に有為差を認めなかった.術前値を100%とした変化率では,動脈化群が遮断群(76%)と比較して有意(p<0.05)に高値(160%)を示した.(4)AKBR:動脈化群と遮断群間に有為差を認めなかった.(5)肝組織血流(ml/min/100mg):動脈化群と遮断群間に有為差を認めなかった.【考案】動脈化群は,門脈酸素分圧と門脈血流が,術前値を100%とした場合の変化率が遮断群と比較して有意(p<0.05)に高値であった.この結果,肝動脈-門脈シャント術は,肝動脈遮断後の肝血流量と酸素供給量を維持でき,肝不全予防に有用であると考えられた.今後,動脈化群と遮断群における肝の組織学的検索が必要である.
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