研究概要 |
大腸進行癌の間質から腫瘍細胞までの間に存在する線維成分を組織レベルの免疫走査電子顕微鏡法(免疫SEM)で同定することにより,相互の関係を立体的に解明することを目的として試料の作成と観察に多くの工夫を行ってきた.平成6〜7年に腫瘍-間質境界部と正常腺管-粘膜固有層境界部に免疫SEM法を行い,間質に分布するI型コラーゲン,基底膜のIV型コラーゲンを金粒子で標識して、反射電子像および二次電子像で観察した.また標識部位を予測するために,同様に作成した試料にテキサスレッド蛍光染色をほどこし,共焦点レーザー走査顕微鏡で三次元的再構築像を合成した.I型コラーゲンと同定された線維は,腫瘍間質においては幅が太く腫瘍腺管の外側面と平行に走る傾向があり,基底膜側との連絡は疎であった.腫瘍-間質境界部では基底膜あるいは腫瘍細胞まで到達する像が見られたが,数は少なく基底膜の線維とスムーズに移行する像はなかった.IV型コラーゲン線維は基底膜を形成し,線維間の間隙に乏しく,方向性をもって密に波打つように走行し,所々で断裂像していた.対照とした正常腺管-粘膜固有層移行部では,I型コラーゲンはしだいに細く分枝して基底膜に分布し,そのIV型コラーゲンに移行するように互いに密な連絡を有していた.IV型コラーゲン線維から成る基底膜は連続性で間隙の広い編目状を呈し,一部は結合組織側に伸びてそこの線維と密に連絡していた.【研究成果】1.腫瘍の基底膜は不連続で間質との連絡に乏しいことから,新たに沈着して形成されたものと思われ,また支持機能に乏しく物質透過に不向きと考えられた.2.組織レベルの免疫SEMが可能になったことで,腫瘍-間質境界部の割断面を観察する研究モデルが確立させ,諸研究の結果を検証するために利用できる.
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