研究概要 |
【要約】 近年,一部の胃癌にEBV遺伝子が検出され話題になっている.本研究ではEBVの発癌蛋白であるLMP抗原の胃癌組織内における局在牲と胃癌切除によるLMP抗体価に対する影響を,術前術後で比較することでEBVと胃癌との関連牲について検討した.対象は胃癌患者245例/570検体,同年齢層の健常者160例,胃良牲疾患として急性胃炎34例,胃潰瘍47例,胃ポリ-プ26例を用いた.60例のホルマリン固定,パラフィン包埋の手術材料を用いた.LMP抗体の特異性についてはウエスタンブロットにより確認した.LMP抗原の局在牲は抗LMPの単クローン抗体による免疫組織化学染色で行なった.1)LMP抗体の保有率は健常者では60歳未満は0%,60〜90歳未満で10%前後であった.胃癌患者は40歳から陽性例が認められ,抗体陽性率は60%以上であった.さらに胃の良牲疾患との比較では胃ポリ-プ例で4.7%,胃炎例で7.6%,胃潰瘍例は11.4%であった.これに対して胃癌患者は早期癌例では69.0%,進行癌例で78%であった.2)胃切除による影響はVCA-IgG,EA-IgG,NA-IgG抗体価では術前と比較し認められなかった.しかしLMP抗体は術後に有意な抗体価の低下を認め,胃切除による影響を受けた.3)胃組織におけるLMP抗原の発現は非癌部組織を含めると91.7%(55/60)であった.胃癌組織内に限定すると75%(45/60)の発現率で,16.7%(10/60)は非癌部組織の表層上皮と固有腺管であった.以上の成績を第43回,45回日本消化器外科学会,54回,55回日本癌学会総会,第68回日本感染症学会,第43回日本ウイルス学会総会にて発表した.胃癌の発生要因としてEBVの関与が示唆される.今後さらに胃癌の発癌機構の解明には生体側の免疫応答,HLAとの関連牲を含め解析して行かねばならない.
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