研究概要 |
癌抑制遺伝子p53およびmyc遺伝子ファミリーのアポトーシス誘導の相互作用を解析するためそれぞれの遺伝子の異常と臨床データとの比較,遺伝子導入による抗癌剤の感受性の比較を行うこととした。 1)原発性肺非小細胞癌47例につきPCR-SSCP法をもちいてp53遺伝子変異の検出を試みた。12例(25.5%)に遺伝子変異を認め,うち3例は喫煙との関係が示唆されているG→Ttransversionであった。p53遺伝子の変異の有無とTNM各因子,組織型,予後のあいだに有意な相関は認められなかった。また化学療法を追加した症例の生存率に有意差は認められなかった。 2)またp53遺伝子変異の免疫組織学的検討も増殖細胞核に発現するKi-67抗原の分析との比較を交えて行った。肺非小細胞癌切除例162例を対象として,変異型p53遺伝子による異常蛋白に対するDO-7抗体および増殖細胞核に発現するKi-67抗原に対するモノクローナル抗体MIB-1を用いて,切除した腫瘍の免疫組織化学染色を施行した。MIB-1,DO-7ともに陽性率は術後病理病期とは関連がみられなかったが,生存率との関係ではDO-7陽性例は絶対的および相対的治癒切除症例全体では有意に予後不良であった。さらにp53異常蛋白発現およびKi67抗原発現の両者の間には有意な相関がみられた(P<0.05)。 3)遺伝子導入細胞実験 実験を簡素化するために,cell lineより変異型p53遺伝子を有し,myc遺伝子の過剰発現がみられないものを選び出し,これに発現ベクターに組み込んだmyc遺伝子を導入,発現ベクターのみを組み込んだ細胞とetoposideに対する感受性の比較を行うこととした。ヒト肺癌cell line計7株につきp53遺伝子の変異を分析し,5株に遺伝子欠失を認めた。これらについてmyc遺伝子の過剰発現の有無をノザンブロッティングをもちいて解析中である。
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