研究概要 |
肺移植後のgraft failure,肺水腫は再灌流時に発生する活性酸素が主な原因と原因と考えられている。この様な再灌流障害を抑制することは移植医療における少ないドナー臓器のvibilityを保つうえで非常に重要である。ADF(Adult T-Cell Leukemia derived Factor)は生体内における酸化還元反応を調節するhuman thiredoxinであることが明らかにされた。本研究では犬左肺移植モデルを用いて、温阻血後の再灌流障害に対するADF,既知noスカンベンジャーであるn-acetylcyteine(NAC)の効果について検討した。19頭の雑種成犬に対し100分の温阻血後、左肺同種移植を行った。再灌流後130分間移植肺の機能を測定した。ADF群(n=6)では30mg/kgのADFが再灌流中に経静脈的に投与された。NAC群(n=5)では150mg/kgのNACが同様に投与された。コントロール群(n=8)ではPBSのみが投与された。ADF,NAC群ではコントロール群と比較して有意に良好な酸素化能を示した。組織学的にも、ADF,NAC群の肺は正常構造を保っていたが、コントロール群では著名な肺水腫の所見が見られた。また、Ex-vivoラット肺灌流モルにおけるADFの効果を検討した。90分、37℃の虚血においたラット肺をKrebs-Heneleit液で灌流し、肺の機能を評価した。ADFとL-cysteinを併用した場合、肺の虚血再灌流障害は有意に軽減されたが、ADF,L-cystein単独の投与ではその効果は認められなかった。これらの実験から、肺の虚血再灌流障害に対しADFの効果が期待された。ADFそのものに重篤な副作用がないことより、臨床肺移植においても、再灌流障害予防のために使用できる可能性がある。
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