研究概要 |
気管気管支軟化症(TBM)は,気管・気管支壁の支持性が減退し,呼出時に内腔の虚脱を招く疾患で,Relapsing polychondritis(RPC)は全身の軟骨組織およびムコ多糖類を多く含む組織を系統的に侵す疾患で共に病因は明かではない。両疾患の気管・気管支軟骨及び耳介軟骨における細胞外マトリックス分解酵素(Matrix metalloproteinases,MMPs)の発現を特に軟骨の主な構成成分であるII型collagenとproteoglycanに特異性のあるMMP-1(collagenase)・MMP-3(stromelysin)及びこれらに拮抗するTIMP-1についてin situhybridization(ISH)法および免疫染色により検討した。対象はTBM10例とRP3例および当科で肺切除術を施行した症例と剖検例合わせて40例を対象とした。パラフィンブロックより連続切片を作製し,それぞれ約400KbよりなるMMP-1・MMP-3とTIMP-1のcDNA probeをニックトランスレーション法で^3H-thymidineで標識しISHを行なった。またモノクローナル抗体を用いて免疫染色を行いコントロール群と比較検討した。結果,MMP-1およびTIMP-1の発現陽性細胞は軟骨細胞,線維芽細胞,繊毛上皮細胞,血管内皮細胞であり,またMMP-3は軟骨細胞,線維芽細胞であった。さらにTBMおよびRPの軟骨組織ではコントロール群に比しMMP-1・MMP-3は有意に広範囲で多くのmRNAが産生されていた。TIMP-1では差はなかった。一方,免疫染色の評価では3種全ての酵素において有意に広い範囲の細胞で陽性であった。今回の結果よりTBM・RPともに成因にこれらの酵素の多大なる関与が示唆され,両疾患発症のメカニズム解明のための有益なる結果であったと思われる。
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