研究概要 |
カイニン酸(KA)てんかんモデルにおける海馬錐体細胞死には、アポトーシスに関連する遺伝子の発現・増加があると考えられ、その同定とアンチセンスDNAを用いた遺伝子治療の端緒となる研究を計画した。平成6年度には、カイニン酸てんかんモデルを作製し、経時的に取り出した脳よりFas, c-fos, c-mycなどについて組織、分子生物学的手法を用いて検討を行ったが、それらの発現は確認することができなかった。そこで、平成7年度は、当初の計画を変更し、このてんかんモデルにおける海馬錐体細胞死に、アポトーシスがどのような時期に関わるかを、in situend labeling法を用いて検討することにした。in situend labeling法は、蛋白分解酵素で軽く処理した後、terminal deoxynucleotidyltransferase (TdT)を核内DNAの3OH未満にビオチン化したデオキシウリジンを結合させ、そのビオチンを免疫組織学的に検出するもので、ApopTag・Kit (ONCOR社)を使用した。ApopTag染色で最も早く陽性となるのは、既に形態学的変化(HE染色で、濃染像および細胞脱落)を示しているKA投与後の18hのCA3錐体細胞であった。24hになると、CA2を除くCA1, 3, 4でもApopTag染色が陽性となった。CA2錐体細胞に変化が及ぶのは、他の部位より遅れて、注入後7dであった。amygdalaは、24hに、entorhinal cortexは、72hに陽性となった。今回の結果より、扁桃体にKA注入後18hより少なくとも、7dまでは、海馬でのApopTag染色が陽性となったことより、KAのdistant brain damageによる海馬錐体細胞死にapoptosisが関与することが示唆された。さらに、正確に,apoptosisであることを証明するためには、錐体細胞の電顕的検討や、電気泳動法によるDNAのladderingを確認することが不可欠となり、今後の課題としたい。
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