研究概要 |
1.実験脳腫瘍におけるATX-S10の分布動態の検討 ラット脳内移植モデルを作成し、ATX-S10を20mg/kgの濃度で腹腔内投与した後1,3,4,6,12時間後に脳腫瘍、腫瘍周囲脳、反対側正常脳、及び血清、肺、肝、腎、筋の各臓器を採取し、ATX-S10の濃度を解析した。その結果1,3,4,6時間においては腫瘍におけるATX-S10の集積性が腫瘍周囲脳、反対側正常脳に比し非常に高かった。また、12時間後にはATX-S10は脳腫瘍からもほとんど排出され、高い腫瘍集積性とともに比較的速やかな排泄性も示された。腫瘍周囲脳におけるATX-S10の集積性は各時間とも脳腫瘍より低かったが、いずれの時間も反対側正常脳より高い集積性を示した。すなわち、腫瘍周囲脳において脳腫瘍と反対側正常脳の中間の集積性を示した。他臓器については、血清内集積性は1,3,4,6時間後とも腫瘍集積性より高かったが、12時間後にはほとんど排出されていた。肺、肝、腎、筋においてはATX-S10の集積性は正常脳と同程度に低かった。総括すると、今回の検討でATX-S10の高い腫瘍集積性と速やかな排出が確認され、ATX-S10はphotofrin IIなどの従来の光感受性物質に比して望ましい分布動態を示すことが判明した。 2.ATX-S10の放射線増感作用の検討 In vitroにおいて9L gliosarcomaの継代培養細胞を用い、ATX-S10を1,2.5,5,10mg/mlの濃度で添加後、コバルト60(以下Co60)を2,5,10Gyの線量で各々照射した。予測ではATX-S10が高濃度になるほど放射線による細胞死滅率が増大するものと思われたが、結果は予測に反してATX-S10が高濃度になるほど細胞死滅率は低くなった。 ATX-S10の放射線増感効果の有無をin vivoにおいても検討したが、結果はin vitroでの実験結果と同様にATX-S10の放射線増感効果は認められなかった。結局ATX-S10には放射線増感効果は無いと判断された。
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