研究概要 |
脳梁活動電位の術中記録を6症例において実施した.一例は前頭葉起始の複雑部分発作であったが,他の5症例はすべて強直性全身発作,非定型欠神発作および矢立発作で,脳波上両側同期性遅棘徐波を呈する症例であった.術後,全部の発作型で一様にではないがいづれも著明な発作頻度の減少がみられ,1例ではすべての発作が完全に抑制されている.手術は,一般に右側開頭を行い、脳梁および右大脳皮質と左大脳皮質硬膜上に5極程度のストリップ状ステンレス電極を配置し,ディジタル脳波モニタリング装置(BIPS)を用いて約20分間記録した.術中記録では発作波の表面陰性徐波が欠如するなど術前記録波形とは異なり,また,術前には認められなかった左右発作波の時間差が明らかになるなど麻酔の影響と推定される変化が認められた.2例で,術中記録中発作波バーストが捉えられたが,それらの記録では,皮質発作波出現時以外にも脳梁活動電位で発作波周期にほぼ一致する大きな電位変動が観察された.さらに,発作波バースト内で,不全型発作波が脳梁記録のみに出現することが観察された.棘波を伴う発作波や発作波バーストは記録できなかった症例でも脳梁活動電位に,ほぼ発作波周期に一致する律動的電位変動が見られ,ときにそれに同期する大脳皮質徐波バーストが認められた.左右大脳皮質発作波および脳梁での発作波の時間関係を調べるため,右あるいは左大脳皮質棘波頂点を基準としてその前後それぞれ約300msの区間の平均棘波パターンを加算法により推定した.全般発作症例では,基準反対側では小さな電位変化が見られるのみで同期性(ほぼ同時に出現する確率)が低温であった3症例でも脳梁活動電位には比較的大きな電位変化が同期してみられ,しかも,皮質棘波に先行する緩やかな電位変動が認められた.この所見は,左右大脳皮質棘波がほぼ同期して出現していた他の2症例でも同様であった.
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