研究概要 |
移植腱である再建靱帯の治癒過程に対する引っ張り刺激(張力負荷)の影響を詳細に検討する目的で,SDラットの膝蓋腱骨複合体を背部の皮下に移植するモデルを用い,刺激の頻度,量をコントロールしながら継続的に加える装置を開発した.初期実験として刺激頻度の治癒過程に与える影響を検討した. 平成6年度には装置のプロトタイプが完成した.平成7年度には装置の改良を行い,予備実験として移植後の組織学的検討及び生体力学試験を行った.組織学的検討により1度壊死に陥った移植腱は周囲組織に囲まれ,移植後4週では全例で線維芽細胞様細胞が腱実質部に侵入していた.また侵入細胞の密度や引っ張り強度が引っ張り刺激の頻度により違いのあることが示唆された.これらの結果から移植腱の初期の治癒過程に対する引っ張り刺激の影響を検討するためには移植後4週で検討することが適切であると判断した. 平成8年度ではさらに装置の改良を重ね,実験の成功率を向上させた.刺激条件は1Nのピーク値,1Hzの頻度,1回15分とした.実験群として正常群,無刺激群,週2回刺激群,日3回刺激群の4群を作成し,移植後4週の試料に対し生体力学的検討と組織学的検討を行った. 試料の引っ張り試験の結果,週3回刺激群は無刺激群に比して統計学的に有意なlinear stiffnessと破断強度の増加を認めた.また週3回刺激群は正常群との間に引っ張り試験で差を認めなかった. 本研究により引っ張り刺激の頻度を高めることにより,移植腱の力学的強度の低下を防ぐことが可能なことが示唆された.また本実験装置を用いることにより移植腱の治癒過程のさらに詳細な検討が可能である.
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