可及的に廃用性筋萎縮を予防するため、早期から運動療法が実施されるが、脆弱な筋にストレスを加えると微小な外傷が生じる危険性がある。これを回避し、かつ萎縮をできるだけ避けるような運動負荷の方法について実験材料としてラットヒラメ筋を用いて検討した。 これらに対して後肢懸垂を行った。その結果、後肢は無荷重となり、また後肢の筋群の活動は約70%減弱した。後肢懸垂中に筋萎縮を予防する目的で、等張性、等尺性筋収縮、および後肢の荷重運動を行った。組織学的検索により筋繊維の横断面積および外傷にともなう組織の変性を評価するためモノクローナル抗体(EDI)によるマクロファージの染色、さらにプロテアーゼ活性の変化を測定した。そして神経・筋接合部の形態的変化も観察した。 結果、横断面積は荷重運動が一番小さく、等張性、等尺性筋収縮運動の順であった。マクロファージの出現の頻度は、荷重運動や等尺性筋収縮運動では散見される程度であったが、等張性運動では著明に多く見られる筋があった。Ca^<++>依存性中性プロテアーゼとそのインヒビターの活性は等張性収縮運動で最も高く、次いで荷重運動、等尺性筋収縮運動の順であった。リソソーム酵素であるカテプシン類の活性もほぼ同様の変化であった。神経・筋接合部の神経下装置の退行性変性の程度は、荷重運動が最も著しく、等張性、等尺性筋収縮運動の順であった。 これらの結果より、等尺性筋収縮運動が筋萎縮は比較的少なく、組織の崩壊の程度も小さく、また神経・筋接合部の退行性変性も僅かであることより、予防の運動として最適であると思われる。
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