研究概要 |
OPLL患者と頚椎症性脊髄症患者より採取した脊椎靱帯において,TGF-βとデコリンの発現を免疫組織化学的に検討したが有意な差を認めなかった。そこで以前より硬度異常が指摘されているOPLL患者項部の皮膚において同様に比較検討した。その結果,OPLL患者の皮膚表皮においてTGF-βの染色性はOPLL患者の方がやや強く染まる傾向があった。一方,デコリンの染色性は,OPLl患者の表皮において有意に増強していた。さらに,デコリンmRNAをin situ hybridization法にて調べると,蛋白レベルのみならず,遺伝子レベルにおいてもOPLL患者でデコリンの発現が亢進していることが明らかとなった。この結果は,脊柱靱帯では,細胞成分が少なく細胞の活動性も低いが皮膚は,細胞成分が多く細胞周期が速いために細胞の活動性が高い為と思われる。OPLL患者皮膚の硬度異常の存在を考えると,この事実は,OPLL患者皮膚における細胞外マトリックスの異常を強く示唆する所見と言えよう。我々はさらに,デコリンの骨形成における発現を調べるため,ラットの骨折モデルを作成,同様にTGF-βとデコリンについて免疫組織化学的に検討したが,内軟骨性骨化の部位においてTGF-βとデコリンの局在は相反しておりデコリンが内軟骨性骨化の過程においてTGF-βに対し,何らかの調節印紙として機能していることが示唆された。デコリンの靱帯骨化に及ぼす直接的な作用は未だ明らかではないが,これらの結果は血漿フィブロネクチンの増加の報告とともに,OPLLにおける全身的骨化素因を反映したものと考えられ,細胞外マトリックスの異常の存在を裏付ける結果と言える。細胞外マトリックスは増殖因子とともに局所の細胞の増殖・分化において重要な役割を持っている事が明らかとなってきており,異所性骨化の開始,あるいは進行において細胞外マトリックスの異常が付加的に何らかの役割果たしていることが推察された。
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