研究概要 |
細胞外マトリックス(ECM)の受容体であるインテグリンが軟骨細胞において発現していることは報告されていたが、その機能については現在までまったく研究されていない分野であった。そこで,FNの軟骨細胞に及ぼす影響を明らかにするため接着分子の発現およびフィプロネクチン受容体を介したヒト軟骨細胞からのサイトカイン産生能に及ぼす影響について検討した。 ヒト大腿骨頭から分離培養した軟骨細胞においてフローサイトメトリーを用いた解析により、α1,α2,α3,α5,β1インテグリンの発現を認めた。また細胞外マトリックスに対する接着実験では、ビトロネクチン,ラミニン,typeI,IIコラーゲン、フィプロネクチンに結合し、フィプロネクチンに対する結合は抗α5,β1抗体により阻害されることが明らかとなった。さらに軟骨細胞を各種細胞外マトリックス存在下で培養するとフィプロネクチンにおいて、IL-6およびGM-CSFの産生上昇が認められた。この産生上昇は抗α5,β1抗体により阻害された。この結果は,インテグリン分子VLA-5(α5β1)を介するFNとの結合によってサイトカイン(IL-6,GM-CSF)産生能が上昇し、さらにFN依存的な接着およびサイトカインの産生増強は抗インテグリンα5およびβ1抗体で阻害されることを示している。 また培養皿上で円盤を回転させることにより剪断力を加える実験では、剪断力が加えられた軟骨細飽でIL-6,ICAM-1の発現上昇、VCAM-1の発現低下が認められた。 これらの研究結果は軟骨代謝において接着分子が極めて重要な働きをしていることを示唆していると考えられる。 今後さらに各種インテグリンおよびECMの機能解析を行い、抗体やペプチドを用いて軟骨変性を制御出来ないか検討を加える予定である。
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