研究概要 |
我々は,圧電素子を用いた嚥下障害の客観的評価法を確立した(群馬医学60,1995,255-260).従来,嚥下評価法として用いられてきた咽頭内圧測定,ビデオ嚥下造影による評価と,本法により得られたdataはcomparibleであった.すなわち,圧電素子を頚部前方,甲状軟骨表皮上に設置し,喉頭拳上時の圧変化をピックアップし,嚥下開始から喉頭拳上まで時間が嚥下障害者では延長していることが明らかになった. さらに,圧電素子を用いたセンサーを節電バイオフィードバック器に接続し,視覚的にフィードバックして嚥下障害のリハビリテーションに応用した.対象は,本法により第2週の遅れを認めた多発性脳梗塞(仮性球マヒ)患者とした.発症急性期から亜急性期にかけては経管栄養を行い,発症2週間後より1日15分,1〜3回訓練した.訓練は,個室のベットサイドで行い,圧電素子のケーブルを,患者の視野に入るように設置したバイオフィードバック器に接続し,嚥下反射に伴う喉頭の動きをアナログメーターで確認させることにより行った.多くの症例で,喉頭拳上時間の変化は訓練前10秒以上であったが,訓練開始4週間後には5秒台,6週間後には3秒台になり経口摂取が可能となった. 本法は,高額な機器を必要とせず,簡便,非侵襲的であり,脳血管障害による嚥下障害患者に対するリハビリテーションとして有用と思われる.
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