研究概要 |
【実験方法】 1)実験的炎症性疼痛モデルの作製:ラットの後肢皮下にホルマリンあるいはカラニゲンを注入し,後肢の挙上,振り回すあるいは舐めるなどの痛みの行動を観察した.同時に注入側の浮腫も確認した.痛みの反応を示した動物を2〜3時間後に斷頭し,脳および脊髄膜標本を調製した.また,ラットの後肢皮下にアジュバントを注入し慢性炎症性疼痛モデルを作製し,7日後に斷頭し,脳および脊髄膜標本を調製した. 2)オピオイドリガンド結合実験:上記動物から得られた脳および脊髄膜標本において,^3H-DAGO(μ選択性リガンド),^3H-DPDPE(δ選択性リガンド)および^3H-EKC(κ選択性リガンド)の3種類のオピオイドリガンド用いて,受容体結合実験を行った. 【結果】 ホルマリンおよびカラニゲンによる急性炎症性疼痛刺激を与えたラットの脳および脊髄での^3H-DAGO,^3H-EKCおよび^3H-DPDPE結合において,総受容体濃度(Bmax値)および解離定数(Kd値)ともコントロール群と有意差を認めなかった.また,アジュバント注入による慢性疼痛刺激を加えたラットの脳および脊髄での^3H-DAGO結合においてもコントロール群と有意な差を認めなかった. 【考察】 ホルマリンあるいはカラニゲン下肢注入による急性炎症性疼痛刺激を加えたラットの脳・脊髄内のμ,δあるいはκオピオイド受容体の変動は認められなかった。また、アジュバントによる慢性炎症性疼痛モデルにおいても同様であった.このような急性および慢性炎症性疼痛刺激は、オピオイド受容体の変動をきたす程のものではないかもしれない.あるいは,たとえ変動があったにせよ,脳あるいは脊髄全体のオピオイド受容体からみればごくわずかなもので本受容体の変動が認められなかったかもしれない. 以上のように急性および慢性疼痛刺激ではオピオイド受容体の変動が認められずモルヒネ投与による本受容体の変化は検討できなかった.
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