研究概要 |
1.ハロセン,イソフルレンなどの吸入麻酔薬には,血管や気道の平滑筋を弛緩させる作用(血管抵抗の減少,気管支痙攣の鎮静)のあることが知られている。我々の,モルモットの摘出標本を用いた実験で,新しい静脈麻酔薬プロポフォールにも同様の弛緩作用のあることが確認された。さらに同様の実験モデルで,血管平滑筋収縮薬(noradrenaline,prostaglandin F2α,KC1)および気道平滑筋収縮薬(carbachol,histamine,KC1)による血管平滑筋および気道平滑筋の収縮反応が,Mg濃度依存性に抑制されることが判明した。 2.3種類の静脈麻酔薬,propofol,ketamine,thiopentalおよびマグネシウム(Mg)の気道平滑筋に及ぼす効果を比較検討した。 (1)静止張力0.5g下の気道平滑筋をketamineは収縮させ,propofolは弛緩させたが,thiopentalでは変化しなかった。carbachol,histamineあるいはpotassiumでsubmaximal precontactionさせておいた平滑筋では,いずれの静脈麻酔薬も弛緩反応を示したが、propofolはpotassium収縮標本において,ketamineはcarbachol収縮標本において,Mgは両収縮標本において強い収縮反応を示したことから,propofolは電位依存性Ca^<2+>チャンネルを,kctamineは細胞内貯蔵Ca^<2+>遊離を,Mgは両者を強く抑制することが示唆された。 (2)フィード電気刺激に対する気管平滑筋のコリン作動性収縮反応および非アドレナリン作動性弛緩反応は,いずれもketamine,thiopentalあるいはMgによって抑制されたが,propofolは弛緩反応のみを抑制した。気管支平滑筋のコリン作動性収縮反応および非コリン作動性収縮反応は,いずれもketamine,thiopentalあるいはMgによって抑制されたが,propofolは後者の収縮反応のみを抑制した。propofolによる気道平滑筋の自律神経伝達抑制作用にはVIP,NO,substanceP,CGRPなどの神経ペプチド類の遊離抑制が関与していることが示唆された。 3.静脈麻酔薬とMgの相互作用について検討した。静脈麻酔薬あるいはMgそれぞれ単独では有意な反応を示さない量でも,両者の併用により気道平滑筋の有意な弛緩反応および自律神経伝達の抑制作用が認められた。
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