研究概要 |
癌の浸潤・転移を考える場合,extmcellular matrixと,これを基質として破壊する腫瘍の産生するtype IV collagenaseが,重要な悪性化進展因子であることが報告されている。また,癌細胞膜表面に発現される複合糖質の糖鎮発現の変化もまた,腫瘍の浸潤度や転移能と関連があると報告されている。in vivoで腫瘍の造腫瘍性を検討する際には,腫瘍細胞と癌本来の因有臓器での間質との相互作用が重要で,"正所性移植"の形で検討することが不可欠となっている。 我々は,膀胱癌の浸潤転移能を評価するため,extracellular matrix metalloproteinase(MMP)と糖鎮抗原の発現について,新しいin vivoの正所性移植モデルを使って検討した。 用いた細胞は,ラット由来(LMC19,MYU3L),マウス由来(MBT-2),及びヒト由来(我々が今回,新たに樹立したSK-I,及びSK-S株)細胞である。正所性移植モデルでは,SK-Sは非浸潤癌,MBT-2,MYU-3L及びSK-Iが浸潤性・非転移性癌,LMC-19は浸潤性・転移性癌を形成した。MYU-3LにMMP-2を過剰発現させると,高率に肺転移が新たに出現した。一方,LMC19に,TIMPを過剰発現させると,肺転移が有意に抑制させた。 さらに,ヒト移行上皮癌株(SK-I及びSK-S)の2種で,膜表面の糖鎮抗原の発現をみたところ,悪性度の高いSK-I株において,BSA,ECA,PNAの各レクチンで強陽性がみられ,糖鎮発現の変化が決められた。 以上より,膀胱癌においても,浸潤転移能の獲得には,type IV collagenase,特にMMP-2の関与が重要であることが示された。また,癌細胞膜表面の複合糖質糖鎮の構造変化も,腫瘍の悪性化に関与していることが示唆された。
|