研究概要 |
本研究では,新生時期のラット前立腺を用い、無血清培養液により器官培養システムを確立し、アンドロゲンによる前立腺器官形成過程における成長因子のParacrine mediatorとしての役割を検討した。ラット前立腺は、テストステロン(T)を含まない培養条件ではほとんど腺管分枝形態発生は認めなかったが、Tを(10^<-8>M)含む培養条件では、著しい2次元的な腺管分枝形態発生を認めた。epidermal growth factor(EGF)およびkeratinoacyte growth factor(KGF)は前立腺増殖を促進させた。特にKGF投与はアンドロゲン非存在下において、ほぼ正常のDNA量および分枝形態発生の73%の増殖を促した。KGFは、間質の繊維芽細胞から分泌されその作用は上皮細胞にのみ働くことから、アンドロゲン作用が上皮-間質の細胞間における成長因子を介した間接的な作用機構により前立腺形態発生をうながす機構が示唆された。さらに,KGFの役割を分子生物学的に検討を加えた結果,KGFがRT-PCR法により生直後のラット前立腺および器官培養した前立腺に認められ,またin situ hybridization法によりKGFの受容体はラット前立腺の上皮細胞にのみ発現していることも確認された.以上より,アンドロゲンは前立腺間質細胞のアンドロゲン受容体に結合しKGFを分泌させ,KGFはKGF受容体を持つ前立腺上皮細胞に働き,増殖および形態発生を促す可能性を示唆する結果が得られた.
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