研究概要 |
エンドトキシンショック時の腎障害の発生におけるnitric oxide(NO)の役割について検討した。 【方法】Wistar ratをpentobarbitalで麻酔後、エンドトキシン(lipopolysaccharide,LPS;10mg/kg)を静注することによりエンドトキシンショックを誘発し経時的に血圧、心拍数、尿量、血中および尿中電解質、尿中nitrite/nitrate排泄量、腎組織(皮質および髄質)内血流量とNO濃度の測定を行った。なおNO濃度は当研究費で購入した一酸化窒素測定装置によった。 【結果】LPS静注後約1時間後より血圧の低下と心拍数の増加が観察され、約6時間でratは致死状態となった。血圧低下が見られない早期より尿量、尿中電解質(Na,K)排泄量およびクレアチニンクリアランスの低下と尿中nitrite/nitrate排泄量の増加が見られた。この時期、腎皮質血流量は有意に減少し、一方髄質血流量は有意に増加した。これと相関してNO濃度は髄質で有意の増加が観察された。この傾向はLPS静注後約4時間後まで認められた。その後はさらなる血圧の低下とともに腎機能は悪化し、尿中nitrite/nitrate排泄量と腎組織内NO濃度、組織血流量はいずれも減少した。NO合成阻害剤(N^ω-monomethyl L-arginine)および我々が見いだしたNO消去剤(imidazolineoxyl N-oxide;carboxy-PTIO)の投与はいずれも上記のparametersの変化を有意に抑制し、腎機能は温存されratはショック状態より回復した。 【結論】以上の結果はエンドトキシンショック時の腎障害の発生初期には腎内、特に髄質でのNO産生増加および腎内組織血流量分布の変化が見られ、これらが腎障害の発生に関与している可能性が示唆された。またNO合成阻害剤やNO消去剤は血圧の低下を抑制しショック状態を改善するばかりではなく、腎機能保護作用も有することが明かとなった。
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