研究概要 |
膀胱癌の病理像と核内型癌遺伝子のc-myc、あるいは増殖因子TGF-β1遺伝子についてNorthern blot法でのmRNAの発現を検出し、また癌抑制遺伝子であるRB遺伝子の産物に関しては免疫組織科学を用いて、これら3者の相関を検討した。 膀胱癌の組織より得られたRB蛋白の発現は38例中9例(24%)において消失しており、またGrade 1あるいはGrade 2ではRB蛋白の発現は22例中0であり、一方、Grade 3症例では16例中9例(56%)に発現が認められた。Low grade,low stageの症例に限るとRB蛋白の発現が17例すべて陰性であるのに対してHigh grade,high stage症例では11例中7例(64%)が陽性であり、有意差が認められた(p=0.0003)。一方、c-myc遺伝子の過剰発現に関してはLow grade,low stage症例で17例中6例(35%)に発現が認められるのに対して、High grade,high stage症例では11例中7例(64%)に発現が見られたが、両者間に有意差は存在しなかった。また、TGF-β1遺伝子の過剰発現ではLow grade,low stage症例で17例中10例(59%)に発現が認められるのに対して、High grade,high stage症例では11例中3例(27%)に発現が見られた。High grade,high stage症例でやや低く、前回の検討と同様にLow grade,low stage症例で高い傾向が見られたが、両者間に有意差は存在しなかった。また、今回の検討ではRB蛋白の発現とc-myc遺伝子の過剰発現およびTGF-β1遺伝子の過剰発現との間にはいずれも相関は認められなかった。 以上より、RB遺伝子の不活化は膀胱癌の進展に関与すると考えられたが、c-myc遺伝子やTGF-β1遺伝子はRB遺伝子の発現には影響しないもの思われた。今後さらにこれらの遺伝子および遺伝子産物の発現と膀胱癌の臨床像との相関について解析してゆく必要がある。
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