研究概要 |
ヒトの糞便中より蓚酸を分解する菌を分離し、これがEubacterium lentumであることは既に報告した。これはDNA-DNA hybridization法による、遺伝子による分類でも確かめられ、Eubacterium lentum WYH-1と命名した。この菌の各種抗生剤に対する感受性を調べると、日常よく使用する薬剤にも感受性を示し、胆汁の成分であるデオキシコール酸によってもその発育が抑制された。 この菌体のcell-free extractはco-factorとしてsuccinate,CoA,ATP,Mg,thiamin pyrophosphateの存在下で高い蓚酸分解活性を示した。succinate,CoA,ATP,Mgはsuccinyl-Co Aに置き換えることが出来た。Sephacryl S-300HRを用いて硫酸アンモニウム沈殿30-70%画分を分子篩クロマトグラフィーすることにより、succinate,CoA,ATP,Mgよりsuccinyl-CoAを生成するsuccinate:CoA ligase、succinyl-CoAをoxalyl-CoAに変えるsuccinyl-CoA transferase、oxalateをformateに変えるoxalyl-CoA decarboxylase、およびformyl-CoA transferase活性を有する分画を得ることが出来た。このように、この菌における蓚酸分解に関与する酵素は4つと予想された。 Oxalyl-CoA decarboxylase活性のある画分をDEAE Cellulofine、およびPhenyl Sepharoseで精製すると、比活性が9.2U/mgの酵素が得られた。SDS-PAGEでみると、ほとんど単一のバンドであることが判明した。分子量はゲル瀘過より約200kDa,SDS-PAGEより約62kDaであるのでtetramerを形成していると予想された。Formyl Co-A transferaseをDEAEセルローズクロマトグラフィーにかけると、その比活性を約0.8U/mlまで上げることが出来た。現在、この外の酵素の単離も試みている。
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