研究概要 |
TNP-470は,血管新生阻害剤であり,in vivoおよびin vitroの両方においてヒト培養がん細胞株の増殖抑制作用を示し,制癌剤のシスプラチン耐性株にも高い感受性を示すことをこれまで明らかにしてきた.このTNP-470の作用機序を分析することにより,現在臨床上で問題となっているシスプラチン耐性の機序の解明が期待される. TNP-470の作用機序として,がん細胞に対するTNP-470の直接作用については9種類のヒト由来培養がん細胞株を用い,[^3H] TNP-470を投与し細胞への取り込みで検討した.これらの細胞内への取り込み量は,各種細胞間で有意な差は無いものの,TNP-470に感受性の低い細胞株では2.3-4.4%がDNAに取り込まれたのに対し,TNP-470に感受性の高い細胞株においては11-46.7%であった.また,TNP-470を投与した後の[^3H] thymidine, [^3H] uridine, [^3H] leucineを添加し細胞内への取り込み量について,時間経過とTNP-470の投与濃度の違いによる変化を検討した.経時的な抑制効果の推移は,投与24時間以降に差が出現し,36時間後において有意であった.投与36時間後の細胞内への取り込みでの比較の結果は,[^3H] uridine, [^3H] leucineでは21〜45%の抑制であるのに対し,[^3H] thymidineにおいては64〜88%抑制され有意に低下し,細胞内でのDNA合成が抑制されていることが示唆された. 以上のことより,血管内新生阻害剤のTNP-470は,(1)細胞内に取り込まれ直接的に細胞増殖を抑制し,(2)感受性の高いでより細胞核内に取り込まれ易く,(3) thymidineに作用してDNA合成の低下が示唆された. 今後は,TNP-470投与後の各種ヒト培養細胞株におけるthymidineの取り込み量の変化とシスプラチン耐性との関係を分析する予定である.
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