研究概要 |
1.エストロゲン(E)低下動物モデルによる骨粗鬆化をきたす部位とE補充投与による骨密度改善効果を認める部位の実験的検討: 22週齢SDラットをSham群,OVX群,OVX+E_2群に分け,3カ月後腰椎骨(L_<3-5>),大腿骨近位端(F-P),骨幹部(F-M),遠位端(F-D)のBMDをDXAで,血中のosteocalcin(OC)と尿中deoxyridinoline(D-Pyr)/Crを前後で測定した。その結果,OVX群のL_<3-5>,F-P,F-DのBMDはSham群に比べ有意に減少したが,F-Mのそれは変化がなかった。OVX+E_2群もOVX群に比べL_<3-5>およびF-DのBMDは有意に増加したが,F-Mのそれは変化がなかった。骨吸収を反映する%D-Pyr/CrはOVX群はSham群と比べ有意に増加し,OVX+E_2群はOVX群に比べ有意に低下した。骨形成を反映する%OCは各群で有意な変化はなかった。以上から,OVXにより骨吸収は亢進し,BMDは海綿骨が豊富な部位(L_<3-5>,F-D,F-P)が減少するが,皮質骨の豊富な部位(F-M)は変化がなく,E_2の補充はOVXにより亢進した骨吸収を抑制し,OVXにより減少したBMDは海綿骨を中心に補填されることが明らかとなった。2.Eによる骨代謝調節機構の検討-動物モデルおよびin vitroによる解析-:8週齢雌性ddyマウスを同様に分け,術後経時的に骨髄細胞を採取し,各骨髄細胞の表面抗原に対するモノクローナル抗体を用いたフローサイトメトリーを行った。また骨髄細胞と骨髄間質細胞株を共培養した。その結果,OVX2週でB-220陽性の骨髄有核細胞数(プレB細胞)の著しい増加を認めた。このプレB細胞の特異的増大はE_2の補充でShamレベルに改善した。一方,正常マウスにE_2を投与しEを過剰にすると,OVXと反対に骨髄B細胞は著しく減少した。共培養系ではE_2はB細胞の増殖と分化を用量依存的に抑制した。以上から,Eの過不足による骨髄造血の変化は骨代謝の変動をきたし,骨量の低下を促す可能性が示唆された。
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