研究概要 |
子宮内膜癌組織では局所的な高エストロゲン状態が見られ,その原因はエストロンサルファターゼ(ES)やアロマターゼの異常と報告されている。しかしながらESの組織局在性は不明であり,その理由は良いモノクローナル抗体が存在しないためである。本研究では,抗ESモノクローナル抗体(MAb)を作成し,ESの組織局在性を明らかにすることを目的とした。 正常胎盤10コからカラムクロマトグラフィーでモノピークを示し, かつES活性の高い蛋白分角を抽出した。BALB/Cマウスに抽出蛋白を計3回免疫し,hybridoma cellを作成。cloning後,ELISAとWestern blotでスクリーニングを行い12種の抗体を得た。正常者と先天性魚鮮癬患者の胎盤とで比較免疫組織化学染色を行った。なお胎盤使用には,患者の同意を得た。Aryl sulfatase C遺伝子を乳癌細胞(MCF-7,T470細胞株)に移入し,ESの酵素活性をみたところ,空VECTORのみの遺伝子移入細胞に比し,ESとDehydro epiandro sterone sulfatase(DEAS)の両活性が高値を示した。これら細胞から抽出した蛋白と,MAbとは反応し,胎盤抽出抗原と反応が一致した。この結果は,作製したモノクローナル抗体がESとDEASの両酵素に反応するものと考えられた。正常子宮内膜と内膜癌組織においては,抗ESMAbは,上皮細胞のみに反応し,G_1,G_2,G_3,全ての内膜腺癌組織において腺癌細胞のみが反応し,間質には反応しなかった。 以上の結果から,免疫組織化学に有用な抗ESMAbの作製に成功した。
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