研究概要 |
これまでに我々は、鼻副鼻腔領域のアレルギーを含む炎症性疾患患者より得られた材料を用い、微小血管内皮細胞の長期培養を確立し、慢性副鼻腔炎上顎洞貯留液中に本細胞と好中球の接着を促進する因子が存在すること、そしてこの作用は抗IL-1β抗体で大部分が抑制されることを見いだし、IL-1βが慢性副鼻腔炎病態に重要な役割を演じていることが予想された。今回、慢性副鼻腔炎患者鼻汁中に線維芽細胞のコラゲナーゼ産生を刺激する因子が存在し、この作用も同様に抗IL-1β抗体で抑制することが判明した。IL-1βは各種細胞で産生されるサイトカインであるが、慢性副鼻腔炎の粘膜においてin situ hybridization法を用いて確認した結果、慢性間接リウマチの場合と異なり、Mφと好中球にIL-1β mRNAの発現が認められた。そこで、IL-1β刺激により誘導される他のサイトカイン(IL-6,IL-8,GM-CSF TNFα,TGFβ等)の動態を、現在培養可能である鼻粘膜来線維芽細胞・微小血管内皮細胞、さらに、近年その培養に成功した絨毛上皮細胞を用いたin vitroの系でELISA,RT-PCR,Northern blotting法によって検索した。その結果、慢性副鼻腔炎患者の鼻副鼻腔病的気道液中のELISA法による定量出はIL-1β,IL-8が比較的多く確認され、同時に同気道液中の遊走してきた炎症細胞においてRT-PCR法にてこれらサイトカインのmRNAが検出され、慢性副鼻腔炎の治療においては病的気道液の排除が重要であることが判明した。また、最近慢性副鼻腔炎に対してその効果が注目を集めている14員環マクロライド系薬剤がこれら細胞のIL-1β,IL-8のmRNAの発現を抑制するという結果もNorthern blotting法によって得られた。そこで、病的気道液の排除を目的に本疾患の治療において、YAMIKカテーテルを用いて副鼻腔貯留液の排除を促し、14員環マクロライド系薬剤やレーザーによる鼻茸切除術を組み合わせることにより、良好な治療成績が得られた。
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