研究概要 |
本研究では本疾患18例について免疫学的およびEBウイルス学的研究を行った.表面形質の解析では18例全てがT細胞抗原(MT1またはCD2)が陽性であった.免疫遺伝子学的には検索した10例全てにT細胞受容体遺伝子の再構成が認められた.EBウイルス学的にはEBER-RNAが16例に検出され,EBNA1とlatent membrane proteinが検索した全例に証明された.さらにSouthern blot法にてEBV遺伝子のclonalityを検索したところ,検索した7例全てに単一のバンドが認められ,EBVゲノムのclonotypicな増殖が生じたことが示された.EBV陽性例では検索した9例全てがNK細胞のphenotypeであるCD56が陽性で,5例にδまたはγ鎖の再構成と発現が認められた.組織におけるICAM-1の発現を検索したところ,血管内浸潤部位(angiocentric region)に極めて強い発現が認められた.さらに血清中の可溶性ICAM-1値は他の頭頸部悪性リンパ腫に比較して有意に高値を示た.以上の成績から本症の多くはEBVがγδT細胞またはNK様T細胞に感染し,クローナルな増殖し,腫瘍化したものであることが証明された.さらに本疾患の転移や免疫能の低下に可溶性ICAM-1の高値が関与している可能性が考えられた.臨床的には早期から肺,皮膚および消化管に浸潤する例が多く,18例中14例が0.8〜31ヶ月で死亡した.3年生存率は9.4%であり,他の頭頚部非ホジキンリンパ腫に比較して有意に生存率が低下していた.
|