研究概要 |
目の脈絡膜血管は三種類の血管感受性神経によって支配されている。即ち,交感神経,副交感神経,感覚神経で三者とも短毛様体神経内に存在している。我々はこの短毛様体神経の刺激によって,脈絡膜に血管拡張反応が生ずるのかどうかを調べた。実験は30匹のネコ(2〜4kg)を麻酔(ペントバルビタール30mg/kg, iv)し,非動化(臭化パンクロニュウム0.2mg/kg/hr, iv),人工呼吸下にて行った。脈絡膜血流はレーザードプラー血流計にて経強膜的に測定した。短毛様体神経の刺激は眼球の近く(P点)と毛様体神経節と副毛様体神経節の間(Q点)との二ヶ所で行った。なお,このQ点には感覚神経が存在しないことが知られている。P点,Q点の電気刺激(2ms, 40Hz, 10s)で高い頻度(80%)で血管拡張反応がα-アドレナリン受容体拮抗薬であるフェントラミン(3mg/kg)前投与で観察できた.1%カプサイシンのP点への塗布により持続的な血管拡張が生じたが,Q点の塗布によっては生じなかった。塗布後は,P点刺激による血管拡張は大幅に減少したがQ点刺激によるものは影響をうけなかった。P, Q点の刺激による血管拡張反応は自律神経節遮断剤ヘキザメソニュウム(3mg/kg, iv)によってはともに影響を受けなかった。これらの結果から脈絡膜血流を増加させる神経支配のメカニズムに二種類のものがあり,一つは感覚神経の逆伝導性血管拡張によるものであり,それはカプサイシンに感受性をもつこと,他は副交感神経性の血管拡張神経によるものでありこれはカプサイシンに感受性がないことが明らかとなった。
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