研究概要 |
1.ヒト角膜上皮(HCE)細胞におけるMHC分子及びICAM-1分子発現において、IFN-γ,TNF-αはすでに報告したように重要な鍵を握るが、その作用機序について培養HCE細胞を用いflow cytometruy,Western blotting,immunoprecipitationにより検討し、以下の結果を得た。 (1)IFN-γは、複数の細胞内蛋白質チロシンリン酸化を誘導した。 (2)IFN-YはMHC class I発現増強作用ならびにMHC class II発現誘導作用を有するが、これらは、蛋白質チロシンキナーゼ阻害剤であるherbimycin Aにより、両作用ともに抑制された。 (3)IFN-γはICAM-1発現増強作用を有するが、HMAは、このIFN-γの作用に対しては充分な抑制を示さなかった。 (4)HMAは、IFN-γの誘導する蛋白質チロシンリン酸化を抑制した。 (5)HCE細胞で、チロシンキナーゼであるJak1,Jak2分子が確認された。 〈結論1〉HCE細胞において、IFN-γは、Jak1,Jak2により誘導される一連のチロシンリン酸化を介して、MHC class I,class II分子を誘導するが、ICAM-1分子の誘導は、重複するも異なる刺激伝達系を介して行われることが示唆された。 また、 (6)TNF-αは、IFN-γと類似するが異なるチロシンリン酸化を誘導した。 (7)TNF-αはIFN-γのMHC class II分子誘導作用を阻止するが、HMAはこのTNF-αの作用を抑制した。 〈結論2〉TNF-αによるIFN-γのMHC class II誘導に対する抑制作用は、IFN-γのMHC class II誘導作用と同様に、チロシンリン酸化を介することが示唆された。 2.角膜細胞間の相互作用に関しては、以下の結果を得た。 角膜実質(HCF)細胞の存在下で培養されたHCE細胞をIFN-γで刺激すると、単独培養したHCE細胞には発現されないB7-1分子が細胞表面に発現した。この結果から、HCE細胞の免疫学的機能は、HCF細胞との相互作用によるB7分子発現を介して高められることが示唆された。
|