研究概要 |
血液型不適合生体部分肝移植症例の4例中3例(75%)で,術後不適合抗赤血球抗体価の上昇した症例を認めたが,抗体価の上昇は必ずしも拒絶反応と相関していなかった.また,グラフト肝に適合する血液型の抗赤血球抗体価(レシピエントは4例ともO型であった)の上昇した症例は1例のみで(25%),不適合抗体価の変動とは一致しなかった.血液型同型あるいは適合の生体部分肝移植症例の6例中4例(67%)に,術後抗赤血球抗体価の上昇する症例が認められたが,術中出血量,輸血,術後感染性合併症の有無,無肝期の長さ,免疫抑制療法,および急性拒絶反応の有無に関して,上昇例と非上昇例間に有意の差は認められなかった.移植以外の手術症例においては,小児外科手術症例の31%(4/13),成人手術症例の13%(3/24)に抗赤血球抗体価の上昇が認められ,自然抗体である抗赤血球抗体を変動させる何らかの因子が存在することが確認されたが,抗赤血球抗体価を変動させる因子を明らかにすることはできなかった.血液型不適合生体部分肝移植術後の長期生存例2例においては,不適合抗体価は術後長期では低値を持続しているが,適合抗体価は術前値に復していた.すなわち,なんらかの機序により,グラフト肝に対する不適合抗体のみの産生が抑制されていることが示唆された. 通常まだ抗赤血球抗体が存在しないとされている正常新生児においても,抗赤血球抗体価が明らかに上昇している例が28例中3例に認められた.年齢による抗赤血球抗体価の分布の検討から,抗赤血球抗体価は,生後6か月から1歳にかけて上昇が見られ,加齢による抗赤血球抗体価の上昇が確認されたが,1歳以降の抗赤血球抗体価は個体差が大きかった
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