研究概要 |
AFP産生肝芽腫のヌードマウス継代腫瘍の生物学的特性について研究を行った。 (1)生化学的特性としては、血清AFP値が98300ng/mlと高値で、ConA非吸着率は8%あった。このことより本継代腫瘍は原腫瘍のAFP産生という特性をよく反映していることが明らかとなった。癌遺伝子では、N-myc,C-myc,K-ras,H-ras,C-erbB2,bcl-2のいずれも増幅は認められなった。染色体分析では、染色体数50にモードを認め、核型は50,XX,+der(1q7p)+2+8+20であった。ヌードマウス腫瘍のDNA ploidy patternは、CV値3.9%,DNA index 1.2でaneuploidyを示した。(2)免疫組織染色については、抗AFP抗体を用いた酵素抗体法により、ほとんど全ての腫瘍細胞にAFPが証明された。α1-antitrypsin染色、keratin染色でも、大部分が陽性腫瘍細胞であった。また、EGF染色では陽性細胞が約1/3に認められた。 AFP産生肝芽腫のヌードマウス継代腫瘍の抗癌剤感受性試験をMTTassayを用いて行った。抑制率をみると、5FUでは25μg/mlの低濃度で16%,100μg/mlの高濃度でも26、2%であった。 ADMでは、2、5μg/mlで31、4%,10μg/mlで46、1%であった。 CDDPでは、6μg/mlの低濃度でも76、1%,50μg/mlの高濃度でも72、6%と高い抑制率を示した。 hepatocyto growth factor(HGF)を投与して、その効果をAFP産生および細胞増殖能の面から検討を行った。3日間培養後、培養液中のAFP濃度の測定とMTT assayを行った。 AFP濃度の増加率は、対照群47.5%,HGF10ng/ml投与群31.7%,HGF20ng/ml投与群30.9%であり、HGFによるAFP産生の抑制効果が認められた。MTT assayでは、細胞増殖抑制率はHGF10ng/ml投与群21.7%,HGF20ng/ml投与群73.0%で、HGF濃度が高いほど抑制効果が増強された。
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