研究概要 |
齲蝕の原因菌であるStreptococcus sobrinusのグルカン合成酵素(GTF)はショ糖からフラクトースを遊離すると共にグルコースを重合して非水溶性粘着性グルカンを合成する。この様な不溶性粘着性を示すグルカン合成は,α-1,6結合を主鎖する水溶性グルカンを合成する酵素(GTF-S)とα-1,3結合を主鎖とする不溶性グルカンを合成する酵素(GTF-I)とのde nova合成に起因することが知られている。しかし,精製GTF-I酵素がα-1,6グルカンをプライマーとしてショ糖から生成する不溶性グルカンには付着性が無い。このことは,de novo合成される不溶性グルカンにはα-1,6鎖とα-1,3鎖の複雑なネットワーク形成によって付着性が付与されるのであろう。 本研究では,GTF-Iと遺伝子をクローニングし,酵素蛋白の大量発現系を確立し,酵素分子構造と機能ならびに不溶性粘着性グルカン合成機序に検討を加えた。 S.sobrinusのGTF-IペプチドはN端末側にショ糖を分解するドメインとC端末側にグルカンを結合するドメインから構成されている。ショ糖とグルコース受容体である高分子のデキストランが存在するときは,効率よく非水溶性グルカンが合成されるが,ショ糖単独ではその活性は著しく低下する。グルコース受容体として,グルコースやニゲロース(α-1,3の2糖)を添加すると,活性は若干回復する。一方,GTF-Iからグルカン結合ドメインが欠失した酵素(GS)は、デキストランをグルコース受容体として利用できないが,グルコースおよびニゲロースはグルコース受容体として機能していた。
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