研究概要 |
バイオフィルムを形成した細菌は浮遊している細菌に比べ抗生物質に対しはるかに抵抗性となることが知られている。この現像のメカニズムを解明する目的で,固相に付着した細菌の抗生物質感受性測定法の開発を行った。細菌を96ウェル組織培養用プレートに付着させ,抗生物質の連続希釈液存在下で培養し,最小発育阻止濃度を,その後薬液を除きさらに培養し,最小殺菌濃度を測定した。その結果,Staphylococcus aureus,S.epidermidis,Escherichia coli,Pseudomonas aeruginosaの標準株及び臨床分離株において,付着細菌の最小殺菌濃度が浮遊細菌に比べて高くなっていることが示された。この現象はβラクタム,アミノグリコシド,ニューキノロン系の抗生物質において観察された。浮遊細菌においては増殖速度がそのトレランスの原因となっていることから,付着細菌の増殖速度の測定を行った。その結果,S.aureusでは浮遊細菌と差がなかったが,P.aeruginosaでは増殖の初期にラグがあることが明らかとなった。また,S.aureusの付着状態でも抵抗性の高くない変異株を分離しその性状を検討したところ,熱ショックタンパクの産生パターンが親株と異なっていた。以上の結果から,バイオフィルム細菌の抗生物質抵抗性の原因の一つとして固相に付着することが重要であることが示され,またその抵抗性メカニズムには,増殖初期に存在するラグ,また抗生物質によるストレスに対する反応の違いが示唆された。
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