研究概要 |
口腔内連鎖球菌による敗血症,心内膜炎,嚥下性肺炎などの重篤な感染症を予防するため,主要な菌種の正確かつ迅速な検出法の開発を試みた.特に齲蝕原性菌として重要なS.mutansについて血液中より検出する方法としてPCR診断法を検討した.S.mutans菌体表層抗原AgI/IIの構造遺伝子spaPの塩基配列を基に本菌種特異的と推定されるオリゴヌクレオチドプローブを作成し,mutans group,その他の連鎖球菌,他の口腔内細菌標準株および歯垢由来のS.mutans臨床分離株,mutans groupについてDNA粗標品を鋳型としてPCRを行ったところ,S.mutansのみ菌種特異的な約200bpのPCR産物が得られた.本反応における検出感度は粗DNA標品の場合4〜40菌浮遊液および精製DNA標品0.3pgであり,きわめて感度は高いことがわかった.さらに,実験的に菌血症を発症させたS.mutans感染マウスより血液を採取,本反応による検出を行ったところ,本菌投与3日後までPCR産物が得られた. 以上の結果から,口腔内連鎖球菌の中で,S.mutansについては極めて高感度にかつ特異的に検出できることから,本菌による敗血症,心内膜炎などの迅速診断法として有用であることが明らかとなった. 他の口腔内連鎖球菌に中で特に心内膜炎あるいは肺炎患者等において検出頻度の高いS.sanguis,S.oraris,S.milleri等についても特異的プローブの検索中であり,これらの混合プローブによりさらに簡便な複数菌の診断が可能になることが期待される.
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