研究概要 |
1.近年,無髄の1次求心性神経に含まれる神経活性物質が多数同定され,それらの分布等は詳しく研究されてきた.しかしながら,各物質の機能的役割は未だ不明で,特にsubstance P(SP)は古くからC侵害受容線維終末から放出される伝達物質の候補とされたが,最近,急性の痛みの伝達物質ではなく,慢性痛における伝達物質または侵害情報伝達の調節、あるいはその両者をおこなうことを示唆するデータが報告されている.本研究は,NK-1レセプターアンタゴニスト(CP-96345)の脊髄局所投与後における,麻酔下ラット脊髄後角侵害受容ニューロン(特異的侵害受容ニューロン;NS,広作動域侵害受容ニューロン;WDR)の抹消刺激応答、特にC線維入力によると考えられる長潜時発射、の変化を調べたものである。 2.CP-96345の鏡像体であるCP-96344を投与したが,有意な抑制効果は見られなかった. 3.非ペプタイド性サブスタンスP拮抗薬CP-96345の脊髄局所投与により,A成分は有意な影響を受けなかったのにたいし、C線維応答では顕著な抑制がみられた。 4.C3投射ニューロンにおいては、非投射ニューロンに比べて、抑制を受けないニューロンが多く、抑制をうけたニューロンの抑制率も小さいという傾向が明らかであった。 5.このことは、サブスタンスPは,侵害情報伝達の痛みの弁別的側面や情動面への関与が相対的に少なく,脊髄レベルの反射等に大きく関与することを示唆する。
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