研究概要 |
軟骨基質には多種類の細胞外基質が存在し、軟骨細胞の増殖および分化を調節していると考えられている。我々は軟骨細胞の増殖がβ1インテグリンに依存することを示唆する知見を得ていた。本研究は、どの細胞外基質が、どのαサブユニットと会合したβ1インテグリンを介して軟骨細胞の増殖を調節しているかを明らかにすることを目的としてなされた。ウサギ成長軟骨細胞はI型,II型コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ヴィトロネクチンなどの種々の細胞外基質に接着する能力を保持し、フィブロネクチンとの接着はα5β1インテグリンおよびRGD配列に依存していたが、コラーゲンとの接着は非依存性であった。いずれの細胞外基質上で軟骨細胞を培養しても、培養を継続するにしたがい、その細胞接着および細胞伸展はフィブロネクチンおよびα5β1インテグリンに依存するようになった。軟寒天培養系を用いて軟骨細胞の増殖に関与しているインテグリン、細胞外基質を検討したところ、細胞増殖はフィブロネクチンとα5β1インテグリンとの相互作用を阻害する抗α5β1インテグリン抗体(BIIG2)およびRGDペプチドの添加により阻害された。一方、α5β1インテグリンとフィブロネクチンのアフィニティーを強める特種な抗体(U1α、Dev.Biol.,169,261-272,1995)の添加は軟骨細胞増殖を促進した。また、ウサギ肋軟骨・骨移行部の成長板の増殖軟骨層に、α5インテグリンサブユニットおよびフィブロネクチンが局在していた。上記の結果は軟骨細胞の増殖にはα5β1を介する細胞外基質、おそらくフィブロネクチンからのシグナルが必須であることを示すものである。さらに、成長軟骨細胞の増殖の調節にα5β1インテグリンが関与していることが示唆された。
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