研究概要 |
カルシウムイオンとcyclic AMPの水分泌に果たす役割に関して以下の結果を得た。1)唾液腺からの分離腺房細胞からの蛍光色素カルセイン分泌に対する自律神経作動薬のうちカルバコール,ノルアドレナリン及びα作動薬が顕著な効果を示した。2)副交感神経作動薬カルバコールによる蛍光色素分泌に対し,単独では効果を示さないβ交感神経作動薬であるイソプロテレノールは増強効果を示した。3)蛍光色素の分泌増強効果を示す自律神経作動薬が,細胞内カルシウムイオン濃度を増加させた。4)蛍光色素分泌の異なりアミラーゼ分泌は,β交感神経作動薬で増強された。5)還流唾液腺からの蛍光色素の分泌は分離腺房細胞からの分泌と異なりカルバコールとα作動薬刺激水分泌刺激直後に一過的であった。6)蛍光色素分泌及び水分泌に対し,カルシウムイオノフォアA23187は緩やかに促進効果を示した。還流液中のカルシウムイオンを除去すると後期の持続的な水分泌のみが,抑制された。Cyclic AMP単独投与では効果を示さなかったが,しかしcyclic AMPとCChの併用は水分泌を抑制した。顎下腺での上記結果とは異なり,耳下腺ではcyclic AMPはCChによるカルセイン分泌を増強した。7)Kチャネル阻害剤Baは水分泌とカルセイン分泌を抑制した。Clチャネル阻害剤DPCは,初期水分泌とカルセイン分泌には影響しないで,後期の持続的な水分泌を抑制した。8)CCh刺激直後には,腺腔側に面した細胞膜が落ち込み腺腔が拡大し,カルセインは細胞内細管内に分泌された。刺激後に引き続いて腺房細胞内に液胞が形成された。細胞外のカルシウムイオンの除去や,Kチャネル阻害剤Ba処理により,液胞形成は抑制された。Clチャネル阻害剤DPCでは液胞形成は抑制されなかったが,液胞拡大が阻害された。9)自律神経刺激剤による燐酸化蛋白質を抗チロシン燐酸化抗体を用いて耳下腺で調べたところ,現在の所大きな差違は認められなかった。
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