歯周病には種々の病型が存在し、それぞれの歯周病に対して特定の病原菌が関与していることが明らかとなったことから、歯周病関連菌の菌体成分免疫原を用いたワクチン療法が動物実験レベルで試みられている。菌体ワクチン投与の結果、炎症や歯槽骨の吸収を進行させたという報告からヒトを対象とた歯周病ワクチンの実現にはコンポーネントワクチンの開発が不可欠であると考えられる。成人性歯周炎の重要な原因菌と考えられている我々はP.gingivalisの40kDa外膜タンパク質遺伝子およびglycylprolyl diamino-peptidase (GPase)遺伝子のクローニングに成功しており、リコンビナント40-kDa外膜タンパク質に対するポリクローナル抗体IgGおよびモノクローナル抗体と補体成分を生菌に作用させることで補体依存性の殺菌作用を引き起こした。さらに、リコンビナントGPaseに対するモノクローナル抗体はP.gingivalisのGPase活性を著明に阻害したことからコンポーネントワクチンとして有用であることが示唆された。次に40-kDa外膜タンパク質およびGPaseを標的としたペプチドコンポーネントワクチンの開発を試みるために、40-kDa外膜タンパク質遺伝子およびGPaseの塩基配列を解読した。40-kDa外膜タンパク質中の6箇所について、ペプチドを合成する領域を設計した。合成ペプチドをMAPとして免疫し、得られた抗血清はMAPを認識するが40-kDa外膜タンパク質を認識しなかった。そこで、合成ペプチドをジヒドロ葉酸レダクターゼをキャリアータンパク質としてコンジュゲートし、ウサギに免疫した抗血清を作成した。得られた抗40血清はペプチドおよびリコンビナント40-kDa抗原を認識した。今後、この抗体と補体成分をP.gingivalis生菌に作用させることで補体依存性の殺菌作用を引き起こすかを検討することによって、ペプチドコンポーネントワクチンの有用性が明らかになろう
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