研究概要 |
Lichenoid Tissue Reaction(LTR)という視点から口腔粘膜疾患をながめ、口腔粘膜におけるLTRの意義や口腔粘膜疾患へのかかわりをさぐることを目的で以下の研究をおこなった。Lichen Planus、Leukoplakia、Erythroplakia、正常口腔粘膜の生検標本を材料とし、これらの標本を、免疫組織化学的にリンパ球サブセットや免疫系接着分子(以下、接着分子)の発現をみた。LTRの成立に関係するといわれているT-Cellサブセットおよび接着因子として、CD1,CD3,CD4,CD7,CD8,LFA-1,CD19,CD45RA/RO,CD54に対する抗体を用いて、免疫組織化学染色をおこなった。染色陽性リンパ球数のカウント、その分布を見るために、染色像を顕微鏡よりCCDカメラ画像でパソコンに取り込み、画像処理ソフトにより陽性リンパ球数を粘膜の部位ごとにカウントした。正常粘膜、各種粘膜疾患とも上皮下に浸潤するリンパ球の多くはCD4+,CD45R0+であるが、Lichen PlanusではCD8+やCD45RA+も上皮直下に比較的多く認められた。更にこの上皮直下のリンパ球には、LFA-1の発現もみられた。皮膚と比較して、正常粘膜においてもmemory T cellが多く浸潤しているこは、粘膜が外来刺激に対して、免疫寛容状態となっていることが推察され、Lichen Planusにおいては、naive T cellが接着分子を発現して上皮下に浸潤することで、寛容状態が破綻をきたして、上皮を障害するものと考えられた。皮膚におけるLTRは過剰免疫反応と考えられているが、口腔粘膜では、このような過剰免疫反応によるLTRは存在しないことが推察された。
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