研究概要 |
シェ-グレン症候群においては,唾液腺内でT細胞のモノクローナルな増生や各種サイトカインの産生などが報告されている.炎症性サイトカインは血管内皮細胞でのICAM-1など接着分子のリガンドの発現を増強させることがわかっている.われわれは,接着分子の一つであるLFA-1が細胞の増殖に必要なシグナルを伝達することを明らかにしてきた.今回,接着分子を介する刺激によるシェ-グレン症候群患者のT細胞機能を検討する目的で,まずヒトT細胞株(Jurkat)を用いて検討した.Jurkat細胞を固層化したCD3抗体とLFA-1抗体で架橋刺激し,細胞内蛋白のチロシンリン酸化状態と細胞骨格成分の凝集に重要なチロシンキナーゼであるp125^<FAK>の活性を検討した.CD3抗体の架橋により,60kD,85kD,120kDの新たなチロシンリン酸化蛋白の出現を認めた.免疫沈降したp125^<FAK>のチロシンリン酸化は,CD3抗体の架橋刺激により出現し,LFA-1抗体とCD3抗体の同時架橋刺激により増強する傾向が認められた.この変化は,LFA-1抗体の用量依存性を示した.またp125^<FAK>活性を放射標識正リン酸を用いたIn vitro kinase assayにて検討すると,チロシンリ酸化の結果と同様にCD3抗体とLFA-1抗体の同時架橋により,強いチロシンキナーゼ活性の誘導が認められた.このことより,接着分子のT細胞活性化にp125^<FAK>が関与している可能性が示唆された.今後,T細胞活性化に接着分子を介した細胞骨格成分の凝集が必要不可欠であるかを明らにし,シェ-グレン症候群患者細胞T細胞と正常者T細胞との差異を明らかにする予定である.
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