研究概要 |
研究計画1及び2については、歯周病を有する被検者から採取した混合唾液中の血小板活性化因子(PAF)は、臨床的に炎症が認められない歯周組織を有する者から採取した混合唾液に比べ約2.5倍高濃度であった。歯肉溝滲出液(GGF)中のPAF絶対量は、GCF量やProbing Depth,Gingival Index及びBleeding on Probingの各指標が大きくなるに従って増加する傾向が認められた。しかし、GCF中のPAF濃度と各指標との間に明確な相関性は認められなかった。歯周治療による病態の改善とGCF中のPAF動態については、現在検討中である。 研究計画3については、PAFはinositol 1,4,5-trilsphosphate(IP_3)感受性細胞内Ca^<2+>貯蔵部位(Ca^<2+>ストア)を枯渇した。PAFによって引き起こされるCa^<2+>流入はPAF受容体拮抗薬により抑制されたことから、PAFによるCa^<2+>流入にはPAFの持続的刺激が必要であることが示唆された。PAFによるCa^<2+>流入はPKC活性化剤TPAの前処理により抑制され,protein kinase C(PKC)阻害薬staurosporine(ST)がTPAによる抑制に拮抗したことから、PAFによるCa^<2+>流入はPKCにより抑制的に制御されることが示唆された。PKCはPAF受容体に影響を及ぼすことが知られており、受容体を介することなくCa^<2+>ストアを枯渇するCa^<2+>-ATPase阻害剤thapsigargin(Tgg)によってもCa^<2+>流入が引き起こされた。このTggによるCa^<2+>流入はTPAにより抑制され,STがTPAによる抑制に拮抗したことから、TggによるCa^<2+>流入はPKCにより抑制的に制御されることが示唆された。これらの結果から、Ca^<2+>ストアの枯渇によって引き起こされるCa^<2+>流入はPKCにより抑制的に制御されることが示唆された。 以上、本研究においてPAFを用いた歯周病評価の可能性が示されるとともに、細胞外Ca^<2+>流入機構の一端を解明しこれまでの一連の研究結果とあわせて炎症性細胞の活性化機序が明らかとなった。
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