研究概要 |
審美修復材として使用されている光重合型コンポジットレジンは,前歯部のみならず臼歯部修復においても広く臨床応用されている。近年,操作性が簡便であることなどの理由により臼歯部への間接修復法が開発された。一般に間接修復法の重合方法は,光重合を行った後,加熱重合を追加して未反応のC=Cを反応させ,架橋密度の向上を目的としている。一方,義歯床用レジンの重合方法は,加熱重合,流し込みによる化学重合,光重合そしてマイクロ波重合など各種重合方法が検討されている。しかしながら,多官能性モノマーへのマイクロ波の影響についての報告は少なく,未だ不明な点が多い。 そこで本研究では,マイクロ波重合型コンポジットレジンインレーの開発として,マイクロ波がベースモノマーの重合性に及ぼす影響について検討を行った。その結果,重合開始剤の添加量の増加により重合性並びに機械的性質の向上をもたらすことが認められた。そして,重合開始剤添加量は,最低限ベースモノマーに対して0.5wt%必要であることが認められた。フィラー添加量の増加は,機械的性質を向上をさせフィラー粒径の違いにより強度に及ぼす影響が認められた。しかしながら,フィラー添加量が増加したにもかかわらず飛躍的な強度の向上が認められなかった。これは,重合体に1.0μm程度の気泡が存在し,さらに一部分でフィラー表面とベースモノマーとの結合が破壊されていたことに起因すると考えられた。したがって今後,マイクロ波重合型コンポジットレジンインレーの開発には,フィラーやその表面処理剤の改良の必要性が示唆された。また,マイクロ波を多官能性モノマーの重合に使用することは,今後のコンポジットレジンインレーの開発に大きく寄与するものと考える。
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