研究概要 |
平成6年度,疲労破壊試験機を試作し,ISO規格に準じた曲げトルク,破断トルクと破断角度の測定および破断状態の電顕による観察をこれまで臨床で使用されているステンレススチール製根管治療用器具3社製品のリ-マ-,Kファイル,Hファイルとチタン合金製の1種について行なった.この結果は,岩手医科大学歯学会に昨年報告した. 平成7年度,上記研究に追加実験から得られた新治療を加え,6月に開催された臨床歯内療法学会に発表し,日本歯科保存学会に投稿し論文として公表した. 実験結果:試作試験機はISO規格試験を行なうに十分な機能を有する物であった.特に優れていた点は,把持部分に我々が開発したアルミチャック法を採用した事である.この方法の採用により,チャック切や変形は全く生じなかった. 試作疲労破壊試験機により,3社のステンレススチール製根管治療用器具(リ-マ-,Kファイル,Hファイル)とチタン合金製の1種について,ISO規格に準じた曲げトルク,破断トルクと破断角度を測定した.さらに,破断状態の電顕による観察,ヌープ硬度の測定を行った.チタン合金製に関しては,EPMAによる組成分析を行った.その結果,チタン合金製の組成は,チタン50.6atom.%,49.5atom.%であり,ステンレススチール製に比較して,硬さ値は低く,曲げトルクと破断トルクも小さく,破断角度は一定の傾向を示さなかった. 本研究の本来の目的は,根管治療用器具の疲労破壊に関する基礎的研究であったが,疲労破壊を起こしづらいと推測されたチタン合金製器具がアメリカで開発され本邦においても市販された事,および疲労試験は膨大な時間を必要とする事から研究が多少横道にそれたが,本来の目的の一部は達成し得たと考えている.今後も,この研究を継続して行きたい.
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