研究概要 |
緒言 歯の象牙質と修復用レジンの接着強化を目的に,生体親和性が期待できるアパタイトを含有したボンディング材を開発し,その接着効果および接着機構解明を行った。すなわち,脱灰象牙質(コラーゲン層)に対する2-hydroxycthyl methacrylate(HEMA)溶液によるコラーゲン線維の固定化効果およびアパタイト含有N,O-dimethacryloyl tyrosine(DMTY)-HEMAボンディング材の浸透拡散性および接着強さとその耐久性について検討した。 結果 象牙質の脱灰コラーゲン層の固定化とHEMA溶液の関係において,コラーゲン線維を保持して固定できたのは溶媒に水を使用した場合で,エタノール,ベンゼンおよび100%HEMAでは固定しなっかた。一方,上述したHEMA/水から成るプライマー処理した被着面に試作のアパタイト含有ボンディング材を作用させると,コラーゲン線維間(約0,05〜0.2μm)にアパタイトを含んだモノマーが浸透して重合していることがSEM像から確認された。接着強さは,40%リン酸,30%HEMA処理象牙質に対するアパタイト含有ボンディング材の初期(24時間値)において16.2±3.5Mpa,熱負荷2万回後で15.9±4.2Mpaの値を示した。同条件でのコントロール(アパタイト無添加ボンディング材)は,初期14.6±3.8Mpa,熱負荷9.8±2.4Mpaであった。 結論 コラーゲン線維の固定化は,プライマーとしたHEMAの希釈溶媒に影響される。本接着システムにおいて,象牙質とコンポジットレジン間にコラーゲン,アパテイトおよびレジンの3成分から成る新しい層が生成することが伴った。以上の結果から,ボンディング材にアパタイトを添加することは,接着強さの安定性につながることが示唆された。
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