研究概要 |
義歯性口内炎の予防と治療に義歯洗浄剤を使用した化学的デンチャープラークコントロールが用いられているが,口腔内の清掃も重要な役割を果たしている可能性も指摘されている.しかし義歯装着者の中には口腔内の清掃に介護者を必要とする場合もあり,より簡便なプラークコントロール補助手段として洗口液に着目し,為害性の少ない生薬成分を配合した洗口液を試作,効果の検討を行うことを目的とした. 本研究では組成の異なる2種類の市販洗口液に抗真菌活性を持つ生薬成分塩酸ベルベリンを各種濃度で添加し,義歯性口内炎の起炎菌として重要な役割を果たしているカンジダ属に対する抗真菌活性試験を行った.その結果,有効と判断されたものについて,真菌に対する効果と歯科材料の物性に与える影響を検討し,以下の結果を得た. 1.2種類の洗口液のうち,Aでは低希釈倍率で高い発育阻害活性を示し,希釈倍率が高くなると活性が急激に低下するのに対し,Bは希釈倍率が高い場合でも発育阻害活性を示した. 2.短時間接触において殺真菌作用はAがBより強く,ポストアンチフンガルアクティビティ試験において数種類の試作洗口液が0.5時間以上真菌の発育を遅延させた. 3.歯科材料の物性試験において,試作洗口液浸漬試料は蒸留水浸漬試料に対して色差・表面粗さともに有意な差を認めなかった. これらのことから,口腔内常在菌でもあるカンジダ属を過剰に増加させない状態でコントロールしていくために,真菌の発育阻害・発育遅延を起こさせ,歯科材料にも影響を与えない生薬成分を配合した試作洗口液の使用は,プラークコントロールの一助となる可能性が示唆される.
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